始めに
今日は、第2回の電子物性のレポートを掲載します。
レポート
誘電体の電気分極を4つ挙げ、それぞれについて図・式を用いて説明せよ。
誘電体の電気分極を4つ挙げると、電子分極、イオン分極、双極子配向分極、空間電荷分極である。
電子分極を説明する。電子分極の図を図1に示す。図1の(a)ように原子は、プラスの電荷の中心とマイナスの電荷の中心が一致していて、双極子モーメントは持たない。しかし、静電界Eの中に入ると、核と電子雲には反対方向の力が作用する。図1の(b)のように電子雲は、変位する。電子の変位によって発生する分極は電子分極という。原子の数が、N個で、マイナス電荷が一様な密度で半径rの球を作っているとすると、分極Pは、P=4πε_0 r^3 Eとなる。
次にイオン分極を説明する。イオン分極は、イオン結合をもつ個体が電界の中に置かれると、正と負のイオンが相対的に変位することで電気双極子が誘導されることをいう。例を挙げると、ハロゲン化アルカリ結晶やHCl分子やCCl4分子の事である。ハロゲン化アルカリ結晶においては、永久双極子を持たないが、イオン間の相対的な変異によって分極を示す場合がある。HCl分子は、永久双極子モーメントを持っており、その配向も分極にあずかるが、一方HとClの原子間距離も大きくなっており、これによって双極子モーメントが変化することがある。CCl4分子では、永久双極子モーメントは持たないが、その結合角度が変化することによって、若干の双極子モーメントが生ずることもある。これらは、分子内の原子の変位によって生ずるので別名で原子分極とも呼ばれる。電子の数をN、電荷の大きさをe、電位による変位をdとおくと、分極Pは、P=〖Ne〗^2 E/dと表される。
次に双極子配向分極を説明する。図2に永久双極子の回転の図を示す。永久双極子モーメントμを持つ分子からできた固体を考える。固体の中では双極子の方向は、数個の特定な方向の1つを占めている。外部から電界を加えていない状態では、双極子の向きをばらばらにしようとする熱エネルギーの作用によって数個の方向のうちどちらの方がより多いということはないので、平均すれば分極は0になる。それを表した図が、図2の(a)である、外部から電界を加えると、双極子は、そのモーメントを電界方向に回転させようとする力を受けるので、回転を妨げようとする熱エネルギー作用に抗して電界方向に向くものが多くなる。そこで、平均してみると電界方向に分極が現れる。このような有極性分子の配向によって生ずる分極を双極子配向し分極という。以上のように、この分極は熱エネルギーの作用と電界の作用との兼ね合いによって生じるものであるから、分極の値は、温度の上昇ともに減少する。なぜなら、双極子方向をばらばらにしようとする熱エネルギーが大きくなるので、電界方向への配向が妨げられるからである。単位体積当たりの分子数をN、分極をPとすると、
P=Nμ^2 E/kTと表される。
次に、空間電荷分極を説明する。図3のように誘電体内部を動き回る空間電荷がある場合には、その移動によって、分極が生じる。これを空間電荷分極という。電荷をかけることによって、図3の(a)から(b)に移動することがわかる。
以上から、誘電体の電気分極を4つ挙げて、図と式で説明することができた。



真空コイルに鉄芯などの磁性体を挿入したときに、インダクタンスが増加する原理について、図・式を用いて説明せよ。
真空コイルに鉄芯などの磁性体を挿入したときに、インダクタンスが増加する原理について説明する。一般に物質を磁界内に入れると、その両端に大きさの等しい、極性の異なる磁荷が発生する。これは、物質に磁界を加えたことで物質内の原子や分子などの構成単位が磁界向きの磁気双極子になったためである。物質の内部では、NS極が互いに打ち消しあい、磁荷が現れるのが、表面だけになる。この時のコイルの図を図4として示す。この物質が磁界の作用によって磁界の向きの磁石になる磁気分極が生じる。この磁気分極が、真空コイルに鉄芯などの磁性体を挿入したときに、インダクタンスが増加する原因だと考えられる。この磁気分極によって生じた磁束密度の図を図5に示す。磁気分極によって単位面積当たりの磁荷Jが現れたとする。この磁荷によってつくられる磁束の方向は電流による磁束の方向と同じになる。以上のことから、真空中の磁束密度は、B_0=μ_0 Hであり、その磁束密度にJが生じることによって単位体積当たりのJ本の磁束が加わる。これによって、磁束密度は、B=μ_0 H+Jとなり、Bは、B0より大きくなる。この場合、コイルの断面積に変化はないから、磁束密度が大きくなれば磁束も大きくなり、インダクタンスも大きくなる。図5に磁気分極から生じた磁気密度を示す。この磁束密度の増加は、図5の磁性体を入れて磁気分極を入れた時にJが発生することがわかることわかるので、空乏層の磁気密度にJの値が足されることがわかる。以上から、真空コイルに鉄芯などの磁性体を挿入したときに、インダクタンスが増加する原理について説明できた。


参考文献
[1]下村武:電子物性の基礎と応用,コロナ社,2018 年,51 版.
終わりに
参考になれば幸いです。
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